
金田一少年の事件簿
ファイル1
オペラ座館殺人事件
※以下からの内容はネタバレを含みます。
推理が官僚していない方はご注意下さい。
桐生殺害
第一の殺人、日高織絵が殺害されたあと、部屋に戻る金田一と美雪に、「この殺人は月島冬子の幻影に取りつかれた誰かの仕業」と話した桐生春美。
その夜、美雪の部屋を覗く怪人ファントムの姿が目撃される。
そして翌朝、桐生春美の死体が、庭の高い木に吊るされた状態で発見される。
ドアのない密室殺人
一人ではとても届かないような高い場所に、ワイヤーで首をくくられて吊るされた桐生の死体。
自殺にしても、台も使わずにどうやってこんな高い場所で首をつったのか?
となると、他殺の線が強くなるのだが、死体の場所は、桐生の部屋の窓の正面。
現場までのぬかるんだ地面には、桐生本人の靴跡しか残されていない。
木に吊るされている桐生がはいている靴についた泥、靴跡と靴の形は一致している。
桐生の部屋は、ドアには鍵とチェーンがかかっている。
桐生春美は自殺か他殺か!?
トリックを金田一が暴く!
金田一の推理ではこう。
桐生の部屋の窓に、内側から見えないようにワイヤーの輪をめぐらせておく。
ワイヤーの端は上の階の日高の部屋に引き込んでおく。
犯人の有森は、日高の部屋から桐生に電話をかけ、窓の下を見るように仕向ける。
そして、彼女が窓から顔を出したタイミングを見計らって、ワイヤーを一気に引っ張る。
窓枠にめぐらされたワイヤーの輪は、桐生の首に食い込む。
そうして桐生を絞殺した後、そのワイヤーをつたって下の部屋に下りる。
死体を担ぐと、今度は彼女の靴を履いて木の下まで行き、死体をきに吊るした。
と、ここまでが金田一の推理。
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ワイヤーはどうしたのか?
窓の外を覗かせてワイヤーで首を絞めるところまでは可能だと思う。
だが、この後、有森はワイヤーをつたって下りたとされている。
ここで不思議なことが・・・。
首を締めあげたあと、そのワイヤーをつたっておりたとするならば、ワイヤーは上の日高の部屋のどこかへ固定していないと不可能なことになる。
桐生を絞殺したあとに、別の手段で下りてもいいのだが、それだと、絞殺した後の、脱力した桐生の死体が、窓から外へ落ちて、ぬかるんだ地面についてしまう可能性がある。
そうすると、死体に泥がつたり、地面に跡がつくため、このトリックはあっさり見抜かれてしまう。
そのため、桐生の死体を吊るしたワイヤーをゆるめることはできないので、そのワイヤーを使って下りるしかない。
本編の描写でも、ワイヤーは一本しかなく、殺害に使用したワイヤーを使っているようにしか見えない。
しかし、有森が引っ張っている側のワイヤーの端は固定されておらず、同じワイヤーを使って下へ下りるなら、絞殺した後に、そのままワイヤーを引っ張り、しっかり張った状態でどこかへ固縛(固く縛る)する必要がある。
絞め殺すだけならまだしも、さらに引っ張り上げてどこかにくくりつけるのはそう簡単ではなく、かなりの力を要するはずだが、そこは可能だとして、固定したこととする。
だが、そのことで次の工程で矛盾が生じてしまう。
金田一の推理ではこうだった。
下におりた有森は、桐生の死体を担ぎ、彼女の靴をはいて子の下まで歩く。
いやいやいや!
ちょっと待て!
ワイヤーは一体どうしたのか?
下へおりるためにはワイヤーは上の日高の部屋に固定しなければならない。
だが、そうすると、下におりてから、桐生の首をしめているワイヤーを外すことができなくなる。
さらに、最後に「木に吊るした」と簡単に言っているが、あの高さに、人ひとりの死体をワイヤーで吊るして固定するのも簡単なことではない。
木の下に到着した有森は、桐生の死体を一旦地面におろし、その後、ワイヤーを木の枝に投げ、枝で折り返したワイヤーを引っ張り、桐生の死体を吊し上げたところで、木の幹にくくりつけるのが最もわかりやすい手順。
しかし、ここでさらに有森の怪力を表す描写がある。
最も楽にできる(実際楽ではないが・・・)方法は、上記のワイヤー投げて折り返して下りてきたワイヤーを引っ張って吊るすことだが、もう一度、桐生の死体発見時のコマをよく見てほしい。
木の枝にひっかけられたワイヤーは、そのまま折り返しているのではなく、木の枝に一周まわしてから折り返している。
この場合、ワイヤーを枝に回してから引っ張っても、ワイヤーが枝を絞めつけるだけで、桐生の死体を吊し上げることはできない。
となると、方法はひとつ。
桐生の死体をワイヤーをくくりつけた状態のままで地面に置く。
ワイヤーを持ったまま、木にのぼり、枝の上で死体を引っ張りあげる。
ワイヤーを枝に一周まわし、それをひっぱりながら下におりる。
そしてそのワイヤーを木の幹に固定する。
というこの方法しか考えられないが、先ほどの2階からの死体のつり上げ同様、恐ろしいほどの怪力である。
しかも、木の幹を見る限り、とても登れそうには見えないが・・・。
簡単に説明しているトリックだが、肉体的にも負担は大きく、時間もかかるため、見つかるリスクもかなり高いと思われるため、かなり難易度の高いトリックといえる。
二度の吊し上げの件は、有森が怪力だったとしても、2階の日高の部屋にくくりつけたワイヤーを回収できない件についての矛盾は否定できない。
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このトリックを成立させる方法は!?
可能な手段はあった。
それは
ワイヤーを2本使用すること。
まず桐生を絞殺し、日高の部屋にワイヤーを固定。
そのワイヤーをつたって、下におりる。
桐生の首をしめているワイヤーを外し、死体を担いで移動。
今度は、別のワイヤーで木に吊るしあげる。
そうすることで、日高の部屋に固定したワイヤーが使えないという矛盾は解消される。
そして、死体発見時に、桐生の首に、ワイヤーの跡が2本ついていて、「なぜ2本ついているんだ?犯人はどうしてそんなことを?」となるのも面白かったかなと思う。
しっかり吊るし上げて固定している状態のワイヤーを外すことも簡単ではなさそうなので、ワイヤーの途中をリングキャッチなどでつないでおき、脱着できるようにしておくのが一番簡単かなと思う。
全てが終わった後に、芝生を通って戻り、日高の部屋のワイヤーを回収すればトリックは完了する。
有森は怪力の天才傀儡子!?
桐生殺害と死体の吊るし上げは、有森は怪力ならば可能だとして、見つかるリスクなどを考えると、かなりの難易度のトリックを成功させた有森はまさに天才。
そして強運!
前回の記事の、ファントム消失トリックと同様、あの「地獄の傀儡師」をも唸らせるほどの技術の持ち主なのは間違いなし!
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